#8 かえり道 あとがき

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Afterword -あとがき-

“冷たい夜風がそうっと僕の胸をつくよ

見上げた空は黒く 吸い込まれてしまった

遠く果てしない世界 僕は一瞬の光になるよ

闇がすぐ 覆ってしまうけれども”

この曲は二十歳の私が書き残した小さな日記なのだ。
というのも、この楽曲の前半部は二十歳の頃に既に完成していたからだ。
日記にはこう記してある。

――真冬のかえり道、まっすぐ伸びる滑走路のような道にひゅーっと風がふいた
冷たい空気はやけに凛としていて、空を見上げると真っ黒な空が広がっていた
嫌なこと、嬉しかったこと、頭の中にあったものが全て吹き飛んで
私はその大きな暗闇にたちまち吸い込まれてしまった――

ペンはそこで止まったまま、未来の私にその先を託していた。

未完成の楽曲は私の中にたくさんある。
かえり道もその一曲で、歩く素直な気持ちや情景をテンポよく歌ったメロディがとても気に入っていた。
でもなぜが惹き込まれなかった。

この曲で私が届けたいモノは何だろうか。

そんなぼんやりとした疑問を抱えて、タイムカプセルのように私の心に眠っていたのだ。

大学を卒業して社会人になり、一人暮らしを始めた。
日記のあの日から長い月日を経て、ようやく足りないピースがこの楽曲にはまる瞬間が訪れた。

“僕らの時間はあっという間すぎて それでもここで光り続けたくて きみに笑っていて欲しくて”

大きな挫折の後にやってきた言葉だった。

社会に出て、生きることの大変さを知った。
生きることは「必要とすること」「必要とされること」だと痛感した。
“必要としてほしいな“そう思っても、見向きもされないこともたくさんあった。
それでも前を向いてもう一度頑張りたいと思うのは、紛れもなく大切な人たちの存在、そして私の想いが届いた人たちの浮かべる笑顔や感動だった。
ちっぽけな存在で、私のできることはほんの少ししかないけれども。

-いろんな想いを胸にしまって、みんな日々戦って生きているのかな。

感動屋で、どちらかというと独り好きで、人一倍悩みやすくてちょっと頑張りすぎる。そんな人に口ずさんで欲しいと思った。

“悲しいことは空に投げた ちっぽけだ何も僕を侵せない 嬉しいことは大げさに胸いっぱいに広げて“

2021.1.20.悠実