Project December
“名もない贈り物”

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Lyric

生きてるものの不思議
みんな温度を持っている

炎は紡がれていたんだ
心のろうそくで受け取って
私はいまここにいる

冷たい夜 強い風が  
私の炎を 拐おうとする
でも私は思い返す
あなたとの時間を

見えない触れない あなたの贈り物は
私の手の届かない 心を温める
  
癒えない消えない 名も無い痛みも
あなたの言葉達は消えない炎となって
私を灯す

炎は紡がれていたんだ

見えない触れない あなたの贈り物は
私の手の届かない 心を温める
  
癒えない消えない 名も無い痛みも
あなたの言葉達は消えない炎となった

ずっと…
私とあなたは”名前のない贈り物”を
贈りあって
確かめて
紡いでいた

今、ここにはちゃんと炎が宿り
私を灯す

Story

– 名もない贈り物 –

日暮時から降った雪は止みそうになかった。
そのくせ降り落ちるそばから地面に吸い込まれていく牡丹雪は、いくじがないと思う。吹雪くでもなく、舞いもしないそのひとひらが、はかない命にさえ思えた。

改札を抜けた広場には例年通りにツリーが設置されている。その前を過ぎる帰宅者の鳴らす靴音が、今日はやけに耳に触った。
異例の聖夜を前に、足早で過ぎてゆく人影こそが街の景色をせわしなくしているように感じる。自分もその中のひとりには違いないのだけれど。
雪のせいなのだと、自分にそう言いきかせた。歩む道にはラムネ菓子のような融雪剤がまかれていた。

夕食を手早くすませて机に向かった。創作に夢中になれば体内時計おかまいなしの闇がくる。いったい今は何時なのだろうと、五分先へ進めてある腕時計の分針を見つめていると、一瞬という曖昧な尺度を疑いたくなった。誰かが待っているわけでもないのに、不確かな焦りが闇をぬって自分を責め立ててくる。シンプルでいてナチュラルな想いを、作品にして届けいたいだけなのに。溢れすぎてしまったこの世界は、無理くりにでもオリジナルであることが必要とされるのだ。
いつだって創りたいという炎を、仄暗い不安と風に似た焦りが拐おうとしている。

外は積もり始めたのだろうか。瞼を閉じると、深いしじまが迫ってきた。

憶いだして――
ひとりごちたそのセリフが、誰かが私の口を借りて吐いたように思えた。闇の中で灯りのありかを探すように、私はかつての「幻の時」を追憶した。

憧れなんて軽い気持ちではなかった。
その場から自分の意思で去ったのは、あの人のように「自分にしかできないこと」を抱いて生きていこうと考えたからだ。

人を好いても、好かれようとはしない人。
ありがとうもごめんなさいもいわせてくれなかった人。
叱りながら泣いてくれる人。
情をかけても、けっして恩は着せない人。
最後の最後まで子ども扱いをしなかった人。

それからの自分はどう生きたのだろうか。
自分だからできることをして生きてきたつもりだけど。
あの時の自分の決断をわがままだなんて思わない。あんなに辛いわがままなんてあるわけないのだから。

涙を噛みつぶして笑おうとすると、体が震えだした。吐き出すことのできない悲しみに、懐かしさが重なって出口を探して暴れだす。

人は誰しも生まれついて本人がのぞむ幸福とは無縁の使命と責任があると思う。それらをともに成就させることができるのならば苦労はないのだけれど、できないのならば捨てるものは決まっていた。
毎日毎日違うステージで光を創っていたあの人は、その使命と責任だけを背負った世界一の芸術家だった。
それを傍で感じることができた私は幸せだと思う。

凍えた窓に、さぁと音立てて雪が散った。

白い布をはりつけたような窓を開けると、あの人から贈られたたくさんの言葉たちが幼い風とともに舞い込んできた。

どれも見憶えのある光たち。
一生忘れることのない「名もない贈り物」。

ありがとう――
忘れかけていた無邪気な声は、炎となって私の心を灯した。

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