Project August
“夕凪”

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Lyric

風に踊る潮と花
ふわり、帽子が飛んでいった

私の肌は赤くただれ
海の中に中に誘うの

この姿のままでいい 
私は曖昧でいい、矛盾を許して
この香りに抱かれたまま
永遠を想う 

「止めて」 
この時を閉じ込め
私とあなたを包んで漂う 
夕凪

捨てれない宝ものたち
腕に抱かれ 穏やかに消えていくの
まっすぐに見つめられぬまま
ただ空を見仰ぐの

…この時を閉じ込め
私とあなたを包んで
お願い

「止めて」
誰もいない浜辺に
私だけ残し漂う夕凪
さよなら

Story

Episode1

閉じ込めたい記憶。

日照りつける太陽に灼かれた肌は、海風が運ぶ潮にしみるように痛んだ。

「そろそろ、いこうか」

彼の優しさは海風よりも心地がよかった。

「あっ」

ふわりと飛ばされた帽子を私たちは夢中で追いかけた。

全てが特別に映るこの瞬間がたまらなく愛しく、そしてとても切なく感じた。

Episode2

――この愛おしい時間が止まってくれればいいのに。

弱まった海風は、波の音を知らせてくれた。
したたかな引波が残酷に見えたのはそんな想いから。
海風がおさまっても、時を刻むような波が止むことはなかった。

ゆっくりと穏やかに過ぎていく時間。

-ああ、このまま彼と抱き合って許されていたい

“でも本当にいいのだろうか”

まだ叶えていない夢があった。
中途半端な私はここにいていいのだろうか。

「置いていきなさい。全部は新しいお家に持っていけないわよ」

幼い頃、母に言われたことば。

今持ってるものを手放せない自分は愚かなのだろうか。

Episode3

それでも止まって欲しかった。

いつからだろう。
一歩踏み込んでしまえば終わりがくると、なんとなく分かっていた。
答え合わせをずっと先に伸ばしても、変わらないというのに。
お互いを想い合う時間は、なんて愛おしかったんだろう。

早く閉じ込めなくては。
あなたとの会話を。
あなたとの景色を。
あなたの匂いを。
あなたの声を。
もう本当に終わってしまうその前に。

仰ぎみた空は、当たり前のように海よりも広かった。

Episode4

――おねぇさん、海とはなしでもしてるんか?
いいかげんにしねぇと、帰る電車なくなっちまうぜ。
でもおねぇさんみたいな人、めずらしくはないよ。みんな海とはなして、わかったような顔して帰ってく。
へへ、いいだろう、ここの海。
この時期だけなんだぜ。
まるで時間が止まってるみてぇだろ?
ここいらで生まれ育った俺だってこうして長いこと見てしまう。この海に包まれているような気がしてくる。

海風が止んで陸風が吹く前。

風がない今このときをね――
夕凪っていうんだ。

Episode5

波の音を残して、辺り一面は闇につつまれていた。

少年が置いていったコーラがいつまでも冷たいままなのははなぜだろう。

「そろそろ、いこうか」

柔らかい陸風が背中を叩いた。

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